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2016年 08月 01日
Self-portrait
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赤すぎる空。これで夜10時。毎晩ここで日が沈むのを味わい尽くした。

アルルで撮影したデータを諦めることができず、しかるべきところへ救済依頼をした。けれど、そのエキスパートをもってしても復旧させることは難しいとのこと。ヤスリで少しずつ削る手作業を何週間もして救済できるかどうかもわからない。費用はパリにもう一度行けてしまうでしょうねとのこと。あまりに現実的ではないと思った。もう人生を終えようとしている人を無理矢理延命治療させるような、なんとも自然に逆らったようなエゴのようなものを感じて諦めた。

本当に人が死んでしまったような悲しみとも違う虚しさだけが残った。ぽっかりと穴が空いたような。ああいなくなっちゃった。そんな感じ。あんなに高揚し、心から幸せを感じて撮った写真が一枚もないなんて。信じらない。受け入れられないと思った。だから業者の方が「カードを返却しますね」と電話口で言ったとき、ちょっと待ってくださいと言ってしまった。なんか心の準備ができていないうちに亡骸が帰ってきても困ると思った。

人の死というのは、物理的になくなってしまうけれど、その人がなくなるということではないと思っている。魂は生き続け、残された人の中で生き続ける。私のアルルでの写真に対する想いも同じだ。あの時の気持ちは光景は今でもはっきりと覚えていて、忘れることはできない。

長く写真を撮っていると、自分が本当に写真が好きなのかわからなくなる時がある。やめてしまいたくなるときもある。けれど、あのときはっきりとああ私は写真を撮ることがこんなにも好きだと改めて感じた。大切な家族や友人に囲まれて幸せだと思う。けれどそれとは別に、写真を撮ることはいつも私のそばにあって私を支えている。写真によって辛い思いもたくさんしてきたけれど、またこの上ない幸せを感じさせてくれるのもやはり写真だ。だからそれにもう一度気づかせてくれたということに意味があると思う。そう思って自分を納得させた。

by sudi.s | 2016-08-01 22:25 | ParisArlesLondon


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